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タクミ・リクルートマガジン

2024.10 号
 

 タクミ電撃リクルートマガジン10月号

 

賃上げしても「給料安い」と不満をこぼす若手社員

 
 

 タクミ電機工業では、3年前に人事・経営管理本部が創設されて以来、採用力や教育力強化を主軸にあらゆる施策を展開して成果を上げている一方、従業員のキャリアアップと満足度向上のために等級制度、俸給制度、人事評価制度といった人事制度をゼロベースから構築した。
 
そして、その人事制度に基づいて大幅ではないものの若年層を中心に毎年賃上げを実行している。
 
しかし、若手社員と定期面談を行ったり、現場に顔を出したりした際に話を聞くと、若手社員が賃金に対して不満をこぼすことが少なくない。
 
賃上げの恩恵を厚く受けている若手社員を中心にこのような不満が出るのは一体どうしてなのか、様々な資料を参考にしながら考えてみたい。
 
 
 賃上げの主な目的は「採用」と「リテンション(雇用維持)」である。優秀な人財を採用したり、離職を防止するには「お金」を軽視してはいけないことを人事はもちろん、社長も理解している。
 
しかし、いまだに「若い人って、お金よりも『やりがい』を重視しますよね」と勘違いしている経営者や管理職が他社には根強く存在すると耳にする。
 
「やりがい搾取」という言葉があるように、「やりがいさえ感じられたら、多少給与が低くても満足するはずだ」という価値観は化石化しており、このような考えでは手塩にかけて育てても離職は時間の問題である。
 

 
 ある統計によると、「やりがい」よりも「お金」を重視する若者たちが増えているのだ。
 
「みんなの転職」サイトが調査した結果では、その傾向は20~30代の若者に顕著だ。
 
その割合は2019年以降に逆転し、ドンドン差が広がっている。
 
皮肉にも「衰退途上国」とまで言われるようになってしまった日本では、ロマンチストよりもリアリストの若者が増えている。
 
「お金」も「やりがい」も両方を満たしたいが、どちらかを選べと言われたら「お金」と答える人が増えているということだ。
 
 
 では、いったいなぜこのような事態になったのか。
 
それは社長と若者との間にある「情報の非対称性」である。
 
若い社員は、賃金の仕組み、賃金相場と妥当性、賃上げ決定の重みについて著しく理解が足りなかった。
 
 
 まず、賃金の仕組みである。
 
当社の若手社員と話をしていると、毎月振り込まれる金額(手取り)と給与所得を区別できない人や賃上げに伴って税金や社会保険料も上がり手取りが減る可能性があることを理解していない人もいる。
 
ゆえに先輩社員のなかにも「なぜ、後輩のほうが給与が高い!」と文句を言うケースも散見される。
 
また、社会保険料については会社側が社員の見えないところで半分を支払っているため、実は社員が見えている額以上に「賃上げ」は行われている。
 
しかし、それを理解できていない若者が大半である。
 
このような無理解は若者だけではなく、中堅社員や管理職の中にも「中小企業なんだから我慢しろよ」と言うだけで、嘆く若者に対して先輩や上司もキチンと説明できていない状況がある。
 
 
 次に賃金の相場と妥当性である。
 
若者たちは業界における水準をまるで知らないケースが多い。
 
だから「十分なのか/不十分なのか」の判断ができず、感覚的に「物足りない」と感じただけなのである。
 
もちろん人事責任者として、当社のような設備工事業や建設業全体、そして製造業や宿泊・サービス業などあらゆる業種の平均賃金などの待遇面を絶えずモニターしている。
 
私も異業種から建設業(設備工事業)を営む当社に転職した当初は、確かに賃金水準は低めだと感じていた。
 
しかし、同業他社の求人情報を収集して比較してみると、当社の賃金水準は業界では中の中くらいであり、他社と遜色のない水準を保っていることが明らかになってきた。
 
無論、大手の製造業と比較すれば劣っているように見えるものの、毎週夜勤があったり、時間外労働が多かったりするなど賃金が高いにはそれ相応の理由があるのだということもよくわかってきた。
 
高校生や学生は賃金月額に注目する一方、所定労働時間はスルーされている傾向にある。
 
所定労働時間が8時間なのか7時間30分なのかによって時間給も違ってくる。
 
製造業の多くの企業が採用している8時間労働では、月額賃金が高く算出されるのは当然のことである。
 
 
 最後は、賃上げ決定の重みである。
 
当社は成熟ステージにさしかかっており、生産性が上がらないことが経営課題となっている。
 
そこで「生産性が上がってから賃上げしてはどうか」というもっともな意見もある。
 
しかし、人事としては生産性を上げてからでは遅く、先に賃上げをする必要があると考えている。
 
他社では賃上げを行ったことにより、従業員のモチベーションが高揚して生産性も大幅に向上したという事例を見聞きする。
 
当社も社員のポテンシャルを信じて、賃上げ先行で改革を進めていきたい。
 
社長も同じ考えで同じ方向を向いているが、経営のトップとして従業員を大切に思うがあまり時間をかけて慎重に検討している。
 
そのように「無い袖は振れない。何とか上げてやりたい!」と思案する経営陣の苦悩に思いを致すのも社会人として必要なことだと考える。
 
 
 最後に、激変していく時代において「情報の非対称性」は大きな誤解を生むマイナス要素である。
 
そこで、経営陣は化石化した労働に対する考えを刷新して、中間管理職はもちろんのこと、若者も経営や組織についての最低限の知識を身につける必要がある。
 
そうすることによって、大海原に乗り出したタクミ丸の全クルーがワンチームとなって安全に最高の航海を続けられるようになると考える。
 
人事の役割は、情報の非対称性を解消し、両者の間に梯子を渡して、社長の思いを、そして従業員の願いを形にすることである、と使命感を新たにした。
 
まさにこれが私の「やりがい」である。「お金」は先ではなく今回も後から着いてくるものと期待して・・・(笑)
 


募集職種:技術系総合職、技術系専門職、営業総合職
勤務地:大館、秋田、盛岡、北上、札幌
 
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(株)タクミ電機工業 人事・経営管理本部 新卒採用担当
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